私達の暮らしと税金
高校生の作文優秀作公開
京都府租税教育推進連絡協議会賞
税金で守る小さな命

京都教育大学附属高等学校 1年
市原 絢奈

 「お母さん、あの耳のかけている猫、どうしたん?他の猫と喧嘩でもしたんかな?」私は家の庭にいた一匹の野良猫を見てそういった。

 ネットで調べてみると、『さくらねこ』ということがわかった。さくらねことは去勢手術をした野良猫のことで、 手術をしたとわかるように耳をカットした形が桜の花びらに似ていることからそう呼ばれている。そしてこの取り組みは野良猫が仔猫を 産んで殺処分されてしまう猫を少しでも減らすための取り組みだ。さくらねこは年々増加傾向にあり、これまで十万匹以上の猫に、この取り組みによって去勢手術が行われた。 そしてその資金がどうぶつ基金という募金で賄われている。そのため私は、日本に税制度を作って募金で手術費を集めるのではなく、ペットを飼っている人から集めた税金で去勢手術を行うのが良いと思った。

 なぜなら、ドイツに「犬税」という税が実際にあるということを知り、日本にも「犬税」ならぬ『猫税』を取り入れるべきだと思ったからだ。

 ドイツの犬税とは一八一〇年から始まったもので、もともと貴族や富裕層が愛玩や狩猟を目的に犬を飼うケースに向けて、タバコやお酒と同じ贅沢税(富裕税)として導入されたのがはじまりとなった。 飼育頭数によって税金の値段が高くなるため、人間が無責任に犬を飼わないようにすること、犬の頭数を間接的に制限するなど対策となっている。 そのため、ドイツで動物の殺処分数は『ゼロ』という結果になっており、「ペット天国」とも呼ばれている。

 だから私は日本から殺処分をなくすためには『猫税』を取り入れることが大切だと思った。そして『猫税』を取り入れることで無責任な猫の飼育頭数も防ぐことができるのではないかと考える。

 昔、日本でも動物に関する税金がかけられていた。一九八二年まで犬税が取り入れられていたが、税額の割に徴税コストがかかりすぎるという理由で廃止された。 他にもうさぎ税や馬税などいくつか動物に関する税金が存在していたが、動物を飼わなくなったなどの理由で廃止された。

 現代では、コロナ禍もあり空前のペットブームだと言われている。ペットはただ単にペットではなく、家族の一員だという意識の変化もある。 このことからも税金のあり方について変えていく必要があると考える。税金で家族を守れるという意識がもっと高まれば、税金にも理解が生まれ、 人間もペットも住環境を良くするために使われるようになるのではないか、と私は思う。

 税金は自分だけのものではなくみんなで助け合うものという意識で、『猫税』の理解も進めば、悲しい思いをする動物が減り本当の意味での優しい日本になるのだと思う。